「水増しの意味、わかるよね」市職員の呆れた実態 公金詐欺事件(産経新聞)

 「40万あれば大丈夫だろ。これに10万ふかせて、50万の見積もりを出してくれ。ここから10万、オレに回してくれ」−。柏崎市建築住宅課係長だった男性被告(50)=懲戒免職=は、こう言って、取引業者に同市に対して水増し請求をさせたという。

 男性被告は、柏崎市が発注した市の診療所の医師住宅増築に付随する塀増設工事をめぐり、業者に代金を水増した見積書を提出させ、工事代金の一部をだまし取ったとして詐欺罪に問われた。18日、新潟地裁(谷田好史裁判官)で開かれた初公判で明らかになったのは、市の建設工事発注で大きな権限を握っていた被告と業者との呆れた癒着関係、それをチェックできなかった行政の甘さ、詐欺の発端となった工事の背景にある地域医療の課題といった地方行政の「歪み」だった。


 検察側の冒頭陳述などによると、被告は平成18年3月下旬、柏崎市の工務店専務に、自分の取り分として10万円を水増しした見積書を作成するように指示し、市から約50万円をだまし取った。

 もともと建築業界で働き、一級建築士の資格を持っていたこともあって、平成6年に柏崎市に建築のスペシャリストとして柏崎市に中途採用された。庁舎の屋上防水工事や、中学校のプール改装工事の監督員も務めた。ところが、12年ごろから妻との関係がうまくいかなくなって家に帰るのがいやになり、足しげくパチンコに通うようになった。13年ごろには消費者金融からの借金が500万円を超え、返済のために不正に手を染めたようだ。

 入札工事の予定価格を教える見返りに複数の業者から“借金”。被告も「10回くらい借りた」と認めており、合計約400万円に達した。

 今回の事件の発端である医師住宅増築工事の入札のとき、被告は「オレは560から570万を切るくらいだと思うよ…」とつぶやいて、水増しに加担した業者に入札価格を漏洩。塀工事に関する50万円の水増しの見積もりを作る際も、業者の専務は社員に「10万円水増しするっていう意味、分かるよね」と念を押したという。その一言で社員が「10万円は被告へのキックバックだ」と理解する阿吽(あうん)の呼吸だった。

 なぜ、こんな不正を未然に防止することができなかったのか。

 事件になった医師住宅の工事を管轄したのは市の国保医療課。塀増設は診療所の医師の妻からの強い要望によるもので、つなぎ止めのために、同課は医師側の要望にはできるだけ応えるようにしていたらしい。ただ、同課には建築工事の見積もりを出せる職員がいなかったため、被告が独占的に積算。同課には、その見積もりが適性かどうかをチェックする態勢がなかった。

 形式上のチェック態勢はある。市の規定では、競争入札による工事に付随する追加工事は、130万円までなら随意契約で発注できるという。しかし、その際は3社から見積もりを提出させ、最も安価な業者に発注する。このため、本来なら水増しされて割高な見積もりが採用されるはずがないのだが…。なんと、他の2社分の見積もりは、随意契約を請け負った当の業者が偽造したものだった。


 検察側は「公務員の職務犯罪行為で、社会に与えた影響は甚大。同情すべき情状もない」として、懲役1年6カ月の実刑を求めた。これに対し、弁護側は「もともと医師住宅の建設工事には750万円が計上されており、約50万円余っていた。被告はその余りの範囲内で水増し請求をしたにすぎない。予算を使い切りたい行政慣行があったため、水増しに手を染めた」と主張して情状酌量を求めているが…。

 判決は1月25日に言い渡される。

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